コラム欄login 精神症状の持つ意味 精神症状は、悪いもの、忌むべきもの、排除すべきものと通常は思われます。しかし、数多くの患者さんを経験すると、別な見方が可能となる場合も少なくないことに、気付くことがままあります。 ある種の精神病では、妄想気分と呼ばれるような異様で理解不可能な、不気味な表現しがたい不安感や耐え難い恐怖感に襲われることが、特に発病当初に起こる ことがあります。しかし、やがては幻聴や様々な妄想からなる幻覚妄想状態に移行することになります。(精神医学用語を逐一解説する紙面の余裕はないので、興味のある方はインターネット等で検索してみてください) この場合、幻覚や妄想と呼ばれる別な症状に悩み苦しめられる状況に陥りますが、代わりにある種の心の平安や落ち着きが得られることになります。解決不能の絶望感や不安感に襲われる状態と、つらく苦しいが一定の形や現象(幻覚や妄想)と、どちらが心の安定に寄与するかは一目瞭然で、後者と断言できます。心の安定に、症状が問題を抱えながらも役立つ例は、他にもたくさんあり、例えば、強迫神経症、対人恐怖症、、パニック発作身体表現性障害(以前は「ヒステリー」と呼ばれていた)などが該当するはずです。 ヒト(生物学的用語です)は、未知のものや形に表せないものを放置できない強迫神経症的な心性を有した種かもしれません。芸術家の苦悩も理解しやすいかもしれません。やや飛躍しすぎたきらいがあるやもしれませんが、精神科医とはこんなことに興味や関心を持つ、夢想家ないしは閑人かもしれません。このコラムが、精神症状に悩み振り回されている方々にとり、多少なりともの救いになれば幸いです。