一期一会とは、相手が愛する家族や親しい知人や友人であれ、あるいは憎むべき人間であれ、
どんな相手との出会いであれ、1回限りで二度はないという意味と私は理解しています。
　日常の惰性的な生活の中では、どのような人間関係も長く続くと思いがちです。そのために、
人間関係の上での様々な悲劇や喜劇が生じます。1回限りで二度はない、とはある意味で大変に
残酷な事実かもしれませんが、人間存在の根源的な宿命と受け止めるべきでしょう。
　私のところへ相談に来る方々の大半は、家庭や職場あるいはその他のもろもろの場所での、
様々な人間関係で悩み苦しんでいます。しかし、いつまでも悩み続けていては、人生の究極の
課題である、自己実現の達成の目標への絶え間ない歩みの妨げになってしまいます。出会いの
一回性について、日々意識することは精神衛生上とても大切です。相性の悪い嫌な相手に対して
思いやりや共感の感情が芽生えるかもしれません。
　私自身も人間関係で数えきれないほどの悩みを抱えてきましたが、人間存在のはかなさや悲しさ
そして愛おしさを今でも感じ続けています。私の考える人間関係での心得は、「清濁併せ吞む」の
心境に到達するための日々の努力を積み重ねることであると思い続けて、日々患者さんと接する
ように努めています。努力が人を裏切ることはあり得ません。