コラム欄login 嫉妬について 嫉妬にまつわる古今の悲劇は枚挙にいとまがありません。日常的にも嫉妬心の毒性に苦しむ方々は、想像以上に多いというのが実感です。嫉妬のもたらす人間関係上の悩みで、来院される女性の患者さんは多いです。家庭内での嫉妬による夫婦間のトラブルは時折りみられますが、職場内でのトラブルでの相談が目につきます。同性の上司や同僚の振る舞いに悩み、精神の不調(うつや不安など)を訴える方々が多いですね。 嫉妬はその特徴として、外部の対象に向かう攻撃性が問題です。時には、自己に向かい、自傷等の自己破壊行動を招来することがありますが、それは例外的な現象であり、臨床的な意味は少ないと言えます。さらに、認識しておくべきことは、嫉妬心の背景には満たされない劣等感が存在することです。 外部に向けられた嫉妬による攻撃性は、対象(来院患者さん)の存在の消滅を目指します。極端な場合は、相手の死亡です。それがかなわない状況では自分の視界から相手が消えること(例えば退職や休職など)で、一旦、問題解決となりますが、やがて別な対象が目標となり、犠牲となります。 嫉妬による攻撃を受けることは、大変に煩わしい事ですが、大切なことは、自分に非があると自責的に感じてはいけないということです。相手を、精神衛生上、健康な人間(ここでは正常か異常かの議論はあえて割愛します)と解釈することに、根本的な誤りがあると心得るべきです。 「君子危うきに近寄らず」という名言があります。時には、降りかかる火の粉は断固振り払う必要があるかもしれませんが、そんなことは、長い人生の中でも、多いとは考えられませんし、それよりは貴重な時間を世のため、人のため、そして何よりも自分のために使うべきと、私は思いますがどうでしょうか? 白雪姫の物語を、再読するのも一興かもしれません。白雪姫の運命は?7人の小人たちの役割は?嫉妬心に苦しむ(!?)女王の最後は?そして、王子の登場の意味は?・・・ なかなか、含蓄の多い傑作と言えますね。