コラム欄login 精神神経用薬と肥満 肥満は、美容上の問題のみでなく、糖尿病・高血圧症・高脂血症などの生活習慣病あるいは心筋梗塞や脳卒中などのメタボリック症候群の原因として、 臨床的に重要な問題で看過できません。一部の貧困国や地方を除き、肥満は 全世界的に増加の一途をたどっています。運動不足と飽食(過食)の必然的な結果と言えます。対策は簡単ですが、ある程度の空腹感を我慢する努力が必要なため、「言うは易く行うは難し」が現状です。肥満は私の若いころは、問題とはならない現象でした。肥満大国の欧米諸国や準肥満国の我が国の存在は最近の出来事です。ある種の精神障害と関連した病的肥満がありますが、ここでは触れないでおきたいと思います。 さて、精神神経用薬(向精神薬)の投与と関連した体重増加や肥満の患者さんをみる機会が最近は驚くほど増えました。しかも薬による肥満はコントロールが困難なことが特徴です。肥満が生存にとり危険な状態であることを、しっかりと認識している医療従事者は驚くほど少ないという現実があります。肥満の訴えに耳を傾ける医師等が少ないという話をよく耳にします。 抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬等の中には、肥満の原因となるものが多いことは事実です。しかし、適当な薬剤の選択により、避けることが可能な体重増加や肥満が多いのも事実です。体重増加や肥満は不可避と諦めるのは、危険な判断と考えるべきです。自分の健康は自分で守るという意識は持つべきです。 こうしたことが、受診患者さんの多くが、適切な治療に不可欠な薬剤服用に拒否反応を起こす原因となっています。適切な薬物治療は、譬えれば3度の食事同様に、大切なものと得心することが大切です。これは、特に強調しておきたいことです。その他の注意を要する薬の有害事象(副作用)については、別の機会に、改めて触れる必要があると思っています。なお、薬の名前を記載することは、さまざまな点で、残念ながら困難であり、当事者の患者さんに直接伝えることにせざるを得ません。最後に一言、老婆心から述べると、インターネットなどからの、薬に対する検索内容 を鵜呑みにしないことが必要かもしれません。しない方が、賢明かもしれません。