コラム欄login うつ病対策 5. うつ病について語るとなれば、かなり分厚い一冊の本が必要となるでしょう。それは、このコラム欄の主旨から外れることとなります。 最後に、うつ病の議論で避けて通れない事柄である、自殺の問題について、触れなければなりません。うつ病は、ある程度進行すると、自殺念慮(自殺願望)を招来するのが常です。うつ病が軽快しない限り、自殺念慮の発展であるところの行動化(自殺企図)の危険がなくなりません。ここが大事なポイントです。うつ病が治療等の手段により軽快すれば、ふつう自殺念慮は消失しそして自殺企図は起こらなくなります。早期発見早期治療でうつ病による自殺は防止可能となります。 しかし、うつ病と関連性のない自殺企図がかなり存在する事実を忘れてはなりません。うつ病は、明白な疾患であるので、治療により、自殺を防止する行為には十分な正当性を認めるべきです。問題は、うつ病等の疾患と無関係に発生する自殺念慮や自殺企図の場合です。これらの場合をどう扱うかは難しい問題となります。 私は、こういう場合には、本人さえ望めば(実際には反対の場合が圧倒的に多い)効果のほどは見当がつきませんが、うつ病に準じた治療を試みることにしています。万が一の鬱病の見落としを防ぐ意味合いもありますので。仮にうつ病ではないとしても、こういう対応が奏功する場合も少なくないと思われます。半強制的な治療(治療とはおしなべて半強制的行為と自戒すべきかもしれません)と本人の意思との間の整合性は、判断困難な場合があります。解決が難しいジレンマです。 なお、私は、自殺の問題は倫理や道徳の観点から、対処すべきという意見には賛成しかねます。人間存在の問題として、対応すべきと考えます。まとまりのない話になりましたが、自殺は精神医療に関わる様々な問題の縮図と言えるでしょうか!?