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不安について
 不安は日常的に誰もが経験する不快な感情です。生物学的には、
不安を引き起こす脳の一部の部位の過剰な活動によるものとされる                                                                                              のが脳科学の解釈と結論です。確かに、抗不安作用のある薬物を
用いれば、一時的に不安は軽減します。そして不安に伴う動悸や
冷や汗や呼吸困難感などの自律神経症状も軽快します。
 しかし、強い不安を経験した人はよく理解できますが、不安が
完全に消失することはありません。繰り返し繰り返し不安は出現
してきます。私の個人的な経験そして臨床経験からは、根源的な
不安の原因は「死への恐怖」と考えられます。つまり、「死の恐怖」
が除去されない限り、不安の解消は不可能です。意識できるかどうか
に関係なく、私たちは生きている間は「死の恐怖」にさらされ続ける
宿命にあると言えるでしょう。精神や心の不健康や病気にも無関係と
言えるでしょう。動物の行動を観察すれば明らかですが、彼らは死を
恐れる本能とでも名付けるものの働きに常時影響されているはずですが、
普段は生に執着することで、死の恐怖に無関心でいられるように見え
るかのようです。
 しかし、動物よりも知性的と考えられる人間の場合は、生の本能に
全面的な解決を求めることは不可能なのは明らかです。人間の場合には                                                                                        事がより複雑と言えるでしょう。不安のない幸福な人生を送るためには
「死の恐怖」の解消が必須と言えますが、それは「言うは易いが行うは
難し」の難事中の難事です。しかし、「死」はこの世の何よりも確実な
出来事です。「死への準備」を疎かにしている無防備な私たちに襲いか
かる「死」という一大事にどう処するか、人生最大の難問です。

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