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陰徳のすすめ
 この世の出来事は、すべて因縁果の法則に則り、生ずると言われます。
あの世があるかどうかは重大事ですが、私の現在の結論は、誤解を避ける
ために、不問としておきます。ただし、診察の場で個人的に言及すること
は、たずねられれば答える用意はあります。
 さて、因果の法則によれば、過去の因縁が現在の結果となり、現在の
因縁が未来の結果になります。時間の流れに狂いがなければ、現在の行い
の結果が未来に現れます。そして、その未来がやがて現在となります。
過去からの結果は、現在に現れますが、その結果の修正は不可能です。
 うつ状態を例に挙げると、うつ状態の人の特徴は過去にさかのぼり過去
を修正しようという無意味な行動を選択することにあります。未来を決定
すべき現在の行動がおろそかになります。うつ状態の人にとり、未来は
予測できない闇となります。そこに絶望という妄想的な誤った考えが生じ
ます。時には厭世感のために、自殺という誤った選択をして、意味のない
死に方をする場合もあります。うつ状態は軽くあつかう病的状態ではあり
ません。
 話がやや脱線しました。本題に入ります。因縁果の法則が絶対の法則で
あるならば、苦しみに満ちた人生を少しでも楽にする方法を考えなければ
ならないでしょう。絶対的な幸福ではないが、少なくとも相対的な幸福感         
を得て、苦を和らげる方法の一つとして推奨したいことは、陰徳の積みあ
げです。善き行いを積み重ねることで、善因善果が期待され、ある程度満足                                                                                                 できる幸福感が得られそうです。偽善は悪ですから避けなければなりません。
人目に付く善き行いには、偽善がつきものですから、人目に触れぬ善行を
心がけ陰徳を積みましょう。一日一善、無理のかからぬ程度に心掛けること
で、重症にまでは至らぬ精神の病気は改善するでしょう。



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